研究概要 |
平成16・17年度の研究成果は以下の通りである。 1)6個の系列位置から構成された系列運動パターンの追従課題を用いて、大学生男子20名がフィードバック(FB)と適応の両制御段階で発現する見越し反応の諸機能を検討した結果、見越し反応の出現比率は、系列位置には依存せず4つの刺激呈示間隔時間(ISI):300,400,500,600msec条件に依存した発現分布を示した。また、系列位置の変化による適応過程では、FB段階の見越し反応は減少するがその後の適応基準試行数の節約には貢献することが見出された。 2)刺激(S)と反応(R)の強制ペース(S-S,S-Rタイプ)と自己ペース(R-S,R-Rタイプ)を含む4種類の系列追従運動スキル課題(ISIは500msec)を設定し、大学生40名を4つの課題群に各10名を割り当てた。そして、FB制御段階と2つの適応制御段階(系列位置とISIを変化させる)での見越し反応の発現様式や適応力の評価基準としての頑健性を比較検討した。その結果、FB段階では次の刺激のタイミングを自己ペースで決定できるR-S群が最も反応が正確で安定していた。また、系列位置の変化に対する適応過程では、系列をイメージ形成したS-S群が高い適応能力を示した。さらに、ISIの変化に対する適応過程での高い頑健性は、系列全体の文脈構造を学習したR-R群に見出された。これらの結果に対して、系列運動スキル学習に系列依存性観点から考察した。今後、これらの知見を基礎にして、人間の系列行動の見越しシステム(anticipatory system)の解明をめざしたい。
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