有酸素運動負荷時の還元型コエンザイムQ10(還元型CoQ10)の生体内挙動とCoQ10レドックスサイクルとの関連性から、CoQ10の疲労軽減効果について検討した。 実験動物には4週令のSD系雄性ラットを使用した。有酸素運動としては水泳を負荷させた。つまり、ラットに体重あたり3%〜4%の錘を尾部に装着し、強制水泳させた。ラットはCoQ10投与群、プラセボ(溶剤)投与群、コントロール(水投与)群の3群に分け、CoQ10はラット体重kgあたり5mg/日になるように飲料水に添加して、2〜4週間投与した。 その結果、3%の錘をつけて水泳を負荷させたラットでは、4週間のCoQ10の経口投与によって著明な水泳時間の延長が観察された。また、CoQ10投与群では、プラセボ投与群やコントロール群に比べて、水泳終了直後の血清乳酸値やLDH遊離量が有意に減少していた。さらに、肝細胞質中のNADPH-CoQ還元酵素活性はCoQ10投与群では他群に比べて有意に上昇していた。このようなCoQ10疲労軽減効果は、一定の水泳負荷後にさらに再度負荷をかけると、CoQ10投与群ではなお一層の著明な水泳持続時間の延長が認められた。 3%の錘を負荷させたラットの水泳終了直後の血清還元型CoQ10値は、水泳を負荷させていないそれよりも有意に低値を示した。しかしながら、4%の錘を負荷すると、血清還元型CoQ10の総(酸化型+還元型)CoQ10に対する比率は逆に上昇しており、運動負荷の程度によって還元比率が変動することが示された。 以上の結果は、最大酸素摂取量にいたる過度な有酸素運動負荷時には、酸化ストレスから生体を守るために還元型CoQ10が動員され、細胞障害の防御に寄与している可能性が示された。また、その防御には、NADPH-CoQ還元酵素などの一連のCoQ10レドックスサイクルが重要な働きをしていることが示唆された。
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