リンガー溶液の温度を低温(15度)と常温(20度)レベルに変化させて、単一筋細胞の酸素分圧応答の温度特性(Q_<10>効果)を調べた。電気刺激によってカエルの単一筋細胞(N=10)を収縮弛緩させて(0.17-0.5Hz、2-3.5min)、酸素分圧応答を連続的に測定し、動的特性のメカニズムについて検討した。低音と常温条件の順序はランダムに実施した。代表者たちが開発した生体応答解析プログラムを用いて、単一筋細胞の酸素分圧応答パラメーター(遅れ時間、時定数、振幅値)を求めた。 低温条件における張力は常温のそれよりも有意に低下した。また、収縮開始時における酸素分圧の低下速度(平均応答時間、全変化量の63%値に到達する時間)は低温条件のほうが有意に遅かった。さらに、酸素分圧の変化量も低温条件において50%ほど小さかった。低温条件において、張力がより低下したことは、有酸素エネルギー発揮過程の減少による影響を受けたことを示唆する。 しかし、高温条件(25度)では、収縮開始時における酸素分圧の低下速度がより速くなった。したがって、高温環境は筋肉細胞ミトコンドリアの酸化リン酸化反応をより早く賦活させ、有酸素エネルギー発揮過程が亢進されたことを示唆する。今回の研究によって、単一筋細胞の酸素分圧応答の温度依存性(Q10効果)が認められた。ヒトで運動前に筋温を上昇させた場合、運動開始時の酸素摂取応答は常温条件のそれと同じであるため、カエルとヒトにおける応答に種の違いがあることが考えられる。
|