研究概要 |
本年度は,2つの基礎実験を行い成果を得た.1点は腸管に存在する,大腸菌細胞膜成分であるLPSがアレルギー発症を抑制できるのか,2点目は運動によってLPSが生体内に吸収される可能性があるのかであった. 実験には4週齢のLPS受容体tlr4変異型マウスおよび野生型マウスを用いてそれぞれにOVA投与群とLPS/OVA投与群を設け感作を行った.その結果,野生型マウスではLPS/OVA投与によって血清総IgE濃度,OVA特異的IgE濃度の明かな増加抑制が観察された.また.脾臓リンパ球を用いて,PMA刺激を行い,フローサイトメータによるCD3^+CD4^+のTh細胞内サイトカイン産生(IFN-γ/IL-4)比からTh1/Th2バランスを評価した結果もまた,野生型マウスのLPS/OVA投与群で,Th1優位に傾く経口が観察された.さらに,LPS刺激によるマクロファージIL-12産生は,tlr4変異型マウスで抑制された.以上のことから,OVA感作マウスのIgE産生の抑制機構として,LPS→TLR4→IL-12→Th1誘導が寄与することが示された.したがって,アレルギー発症をLPSが抑制できる可能性が示唆された. また,12週齢のF344系雌ラットに急性運動を負荷し,上腸間膜静脈血中LPS濃度を測定した結果,有意な増加が観察された. 以上の実験結果から,LPS投与がOVAのアレルギー感作を抑制し,その結果,アレルギー発症を抑制すること,さらに運動がLPSの吸収を亢進させる可能性が示唆された. これらの知見を元に,今後,若年期の運動習慣がアレルギー予防におよぼす効果について詳細な検討を実施する.
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