研究概要 |
昨年度,急性運動が血中LPS濃度を増加させることを明らかにし、さらにこのLPSの投与によって、卵アレルゲンであるOVAの特異的IgE抗体価の明らかな増加抑制を観察した。また、Th1/Th2バランスも,LPS/OVA投与で,Th1優位に傾くことが観察された。さらに,アレルギー抑制にはたらくサイトカインIL-12は、LPS受容体tlr4異型マウスマクロファージで強く抑制されていた。したがって、運動がLPSの吸収を亢進させ、吸収されたLPSがOVAアレルギー感作を抑制し,その結果アレルギー発症が抑制できるのではないかとの仮説が成立した。今年度、この仮説検証のため、アレルギー反応の抑制効果を、アナフィラキシーショックを指標として検討した。また、アナフィラキシーショックのメディエーター、ヒスタミンの血中動態も測定した。さらに、マクロファージを介したアナフィラキシーショックの可能性について、特異的マクロファージ除去薬(リポーソーム封入ビスフォスフォネート)を用いた検討も行った。その結果、LPSは明らかにOVA特異的抗体価(IgE, IgG1)を抑制し、血中ヒスタミン濃度の上昇を抑制したものの、対照群と同様に体温の著しい低下をともなったアナフィラキシーショック症状を示した。この現象は、マクロファージ除去マウスを用いても同様であった。したがって、LPSの効果は、抗体価抑制やヒスタミンなどのメディエーター分泌抑制には作用するものの、アナフィラキシーショックそのものの抑制効果にまでは至らない可能性が示唆された。今後さらに、他のアレルギー反応におよぼす効果について詳細な検討を行う予定である。
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