研究概要 |
高齢者における筋機能の低下は生活行動の低下のみならず、転倒などによる傷害から介護に至る大きな要因となる。 本研究は高齢者の筋機能動態の特性を筋出力および筋反応時間の遅延から検討するとともにそれらのトレーナービリティを明らかにする目的で実施した。 本年度は健常な高齢者エクササイズ群(65〜83歳)19名、健常な高齢者コントロール群(63〜84歳)15名を対象として、膝関節伸展筋力(CON,ECC)、脚伸展パワー、EMD (electromechanical delay)および各種筋反応時間を測定し、前年度からの筋機能動態の変化とトレーナービリテイを検討した。なお、エクササイズ群には週3回以上のハーフスクワットトレーニングを1年間にわたり実施した。 その結果、次のような知見を得た。 1、高齢者エクササィズ群は膝関節伸展筋力は伸張性筋力(Ecc)、短縮性筋力(CON)とも年間で有意(5%)に高くなっていた。また、脚伸展パワーも有意に向上していた。コントロール群はいずれの筋出力にも有意な差が認められなかった。したがって、高齢者に対するスクワットエクササイズは下肢筋力へのレーニング効果が示唆された。 2、高齢者エクササイズ群のEMDはCON、ECCとも年間で有意に短縮されていたが、PMT(刺激開始〜筋放電開始までの時間)、TRT(刺激開始〜外部出力までの時間)に有意な変化は認められなかった。コントロール群の筋反応時間、EMDは年間の有意な変化が見られなかった。 3、エクササイズ群における後期高齢者(75歳以上)は前期高齢者(65〜74歳)と比較して筋出力、EMDの年間変化率が高く、トレーナービリティが大きい傾向にあった。 4、後期高齢者のEMDはECC下がCON下より長く、筋の弾性要素の衰退が大きく影響することが示唆された。 以上より、高齢者の膝関節の筋出力およびEMDは、ハーフスクワットエクササイズによるトレーナービリティが伺われた。
|