metabolic syndromeは冠動脈疾患や脳梗塞の成因を考える上で重要な病態である。わが国の診断基準では内臓脂過剰蓄積を最も重要なものと考え、必須項目に挙げている。しかしわれわれは、肥満を呈さない(BMI<25)が臍高部でのCTによる内臓脂肪断面積が100cm^2を越えるものについて検討を加え、この群が肥満を伴ったmetabolic syndromeと同様の代謝異常を有することを報告してきた。[これらの群をmetabolically obese with normal-weight(MONW)群と呼ぶ]。この群に対する生活習慣への介入が行われれば、種々の代謝異常が是正されるのか、未だ詳細な検討はない。そこで今回、ある地域で実施した健診においてMONWを抽出し、生活習慣への介入を試みた。 今まで三重県御浜町で実施した糖尿病検診受診者829名(男性288名、女性541名)の中から、体重は正常(BMI<25)であるが、膀周囲径が男性≧85cm、女性≧90cmのものをMONWとして抽出した。女性には該当者がいなかったが、男性には32名が存在した。それらに対し生活習慣プログラムを実施するために「メタボリック教室」と題し3時間の講演会を開催し、その後相談会をもった。介入参加者を募ったところ7名の応募があった。また肥満を有する2名からも応募があり、併せて検討することにした。 この9名に対し詳細な食事摂取調査を実施した。ばらつきが見られたものの、エネルギー、食塩、鉄は必要量に対する過不足は見られず、適正な摂取であった。しかしタンパク質と脂質は摂取過剰であり、一方炭水化物、食物繊維力ルシウムなどは摂取不足であった。この中でも脂質摂取に対し詳細を検討したところ、脂質E比、SFA摂取E比、n3系およびn6系脂肪酸の摂取はすべて適正であった。これらの結果を踏まえ介入試験を実施しているが、何分参加者が少なく、再度同様の呼びかけを行いさらに対象者を増やすよう現在努力している。 平成20年度から始まる特定健診・保健指導において、内臓脂肪の過剰蓄積が最も大きな問題として取り上げられる。一般住民の間にも「内臓脂肪蓄積」や「メタボリックシンドローム」なる言葉が周知されてきているので、さらに多数の参加者を募り、研究を完遂させるべく努力をしている。
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