本研究では、回転車輪を用いた自発走運動を運動の手段とし、継続的な運動が、慢性的なストレスにより誘発されると考えられるストレス性高血圧に対してどのような影響を及ぼすかについて検討を試みた。実験には、ストレス性高血圧を引き起こすモデル動物と考えられている10週齢の雄の境界型高血圧ラットを用い、慢性ストレス群(S群)、慢性ストレス+自発走運動群(S+Ex群)、コントロール群(ストレス、自発走運動なし:C群)の3群に分けた(各群3匹)。血圧を無線式テレメトリーシステムにより無麻酔、無拘束の状態で測定するために、血圧測定用の送信機を埋め込む手術を行い、その手術からの回復後(1週間)、S群とS+Ex群には、1日2時間、週5日の頻度で、拘束ストレスを10週間負荷した。また、S+Ex群は、その期間、自発走運動が行えるよう回転車輪の付いたケージで飼育し、C群及びS群は、通常のケージで飼育した。C群、S群、S+Ex群ともに、血圧、心拍数は、実験期間を通じて昼間低く、夜間高いという日内変動を示したが(平均血圧:昼間105〜120mmHg、夜間110〜135mmHg、心拍数:昼間250〜300bpm、夜間300〜400bpm)、それらの値には3群間で明らかな差はなかった。また、実験期間の前半と後半でも、それらの値には差は見られず、S群やS+Ex群で、C群と比較して、血圧が高くなるという傾向は認められなかった。一方、拘束ストレス負荷時の血圧や心拍数の上昇の程度は、S群に比べて、S+Ex群の方が少ない傾向を示した(平均血圧:S+Ex群18±3mmHg、S群26±6mmHg、心拍数:S+Ex群53±14bpm、S群86±18bpm)。したがって、本研究では、継続的な運動により、拘束ストレス負荷時の循環反応は抑制される傾向がみられたが、ストレス性高血圧に対する継続的な運動の影響は明らかにできなかった。
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