研究概要 |
1.目的 本研究はアレルギーの一次予防を目的に包括的健康管理・健康教育のシステムを構築を目指すものである。このため,生徒の健康状態を20年間にわたり定点的に継続調査してきた兵庫県淡路島の五色町をモデルとして,基礎的知見を得ることを目的とした。本科研課題申請年度の2年度として,昨年度の調査研究を引き続き行い,モニタリングを継続した。 2.方法 対象地域での生徒の健康実態調査を昨年度と同様の方法にて実施し,調査実施期間を伸長した。アレルギーに関しては中学2年生98名を対象にアレルギー性疾患の既往歴に関する問診票による調査,および血清IgE抗体(総IgE,抗体特異的IgE 7種)の測定を行った。 3.結果および考察 アレルギー性疾患の既往歴を持つ者の割合は,平成3-9年に比べ,平成10年度以降で高くなっていたが,H16,17年度には若干の減少傾向が見え始めた。アレルギー抗体(血清総IgE抗体)の異常者率は,H10年度以降減少してきた。いずれの割合も昨年度と同様に男子が女子より有意に高かった。7種のアレルゲン(スギ,ブタクサ,カモガヤ,ハルガヤ,コナヒョウダニ,ハウスダスト1)に対する特異的抗体の陽性者率はいずれも小学5年生(平成14.15年度)より中学2年生(平成16,17年度)で有意に高い。また,中学2年生では,特に男子にコナヒョウダニ,ハウスダストの陽性者率が女子よりも有意に高かく,日常生活環境下で男子は女子よりもアレルギーを来しやすいことが考えられた。さらに本年度はこれまでの結果について分析を行い,生理的な血清総IgEのレベルに性差はないが男子では女子より,アレルギー疾患既往歴率と同様に抗原特異的抗体陽性率が高かいため血清総IgEが高くなっていることを示した。また,これらの結果から,血清総IgEのレベルがアレルギー状態を把握する有効な指標であることを裏づけた。
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