本科研捕助金の最終年度に当たり、アレルギーに関する疫学的研究の総括的分析および学校におけるアレルギーの取組、対策の実態調査研究を行った。アレルギーに関する疫学的研究から、一般の児童生徒において、自分自身のアレルギーに関する健康状態の指標として、非侵襲的、確認・記録の容易さなどの条件を満たす、個人あたりの既往した疾患(アトピー性皮膚炎、鼻炎、結膜炎、ぜん息)の種数(0-4)を用いることを支持した。さらに、この指標を得るためには、児童生徒が自分自身の健康、育成歴に関心をもち、アレルギーに関しての意識、認識を高めておく必要があるものと考えた。この結果を踏まえ、主としてアレルギーに対する一次予防の視点からの取組、対策に関して、小学校および中学校(分析対象校、計114校)の集団的(一次予防的)対処の取組の実態を調査、検討した。アレルギー対策はほとんどの学校において現実的なアレルギー疾患児童生徒への個別対処で占められている実態が把握できた。逆に、一次予防の視点からの、すなわち予防を目的とした集団的対処、特に健康教育面の対策はほとんど行われておらず、また、同視点からの重要性も認識されていないことがうかがえた。以上、本研究結果から、アレルギー予防のための有効な健康教育を行うためには、あるいは有効な健康教育の内容として、学校サイドおよび児童生徒自身に、アレルギー性疾患の発症に関してだけでなく、健康状態の経過的観察(モニタリング)など予防の段階について、関心を持たせることが重要であると考えられた。
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