研究課題
【目的】本研究の目的は、低酸素環境と水中環境を併用した運動処方が循環・代謝機能に及ぼす影響について明らかにし、生活習慣病改善に対する運動処方プログラムの確立資する基礎資料を得ることであった。【方法】被検者は特に疾患を有さない体育学専攻学生12名であり、体力が均衡するように2群に分けられた。海抜2000m相当の低圧環境下において1日1回30分間(暴露は2.5時間)のトレーニングを4週間行った。運動は50%VO2max相当の強度による水中運動とした。トレーニング頻度は1群は週4日、1群は週3日とした。週3日群には本被検者とは別に1人の糖尿病疾患者も参加した。トレーニング前後に、最大酸素摂取量、同一最大下運動時の心血管応答、血液性状、身体組成について測定し、効果を評価した。【結果及び考察】4週間のトレーニング後、体重及び体脂肪率は有意に低下した。最大酸素摂取量はどちらも増加傾向を示したが、必ずしも有意ではなかった。最大下運動中、1回拍出量、心拍出量は増大し、心拍数、平均血圧は低下する傾向が示され、特に4日群の変化は有意であった。また、早朝空腹時の血糖値には差は認められなかったが、糖負荷テスト後のアンダーカーブ面積は、低下傾向を示した。さらに3日群に参加した糖尿病疾患者における血糖値は大きな低下が示された(前240、後140mg・dl-1)。血中脂質については、総コレステロールに有意な低下が認められた。以上の結果から、低圧環境下での水中運動は末梢血管抵抗を減少させ、それにともなう血圧低下、一回拍出量、心拍出量の増大といった心血管機能向上に対する好影響を示し、その効果は週4日で十分得られることが示された。また、糖取り込みの促進、総コレステロールの低下から糖・脂質代謝の亢進も推察され、本運動処方は生活習慣病改善に対して有効であることが示唆された。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
体力科学 53・6
ページ: 710
Book of abstracts, 9th Annual Congress of European College of Sport Science
ページ: 111