【目的】本研究の目的は、低酸素環境と水中環境を併用した運動処方が循環・代謝機能に及ぼす影響について明らかにし、生活習慣病改善に対する運動処方プログラムの確立に資する基礎資料を得ることであった。 【方法】特に疾患を有さない青年群A(6名)、B(6名)、C(6名)、中高年群D(5名)が、1回30分間(低酸素暴露は2.5時間)のトレーニングを、4週間行った。尚、A、B、D群は海抜2000m、C群は2500m相当の低圧環境下において、頻度はA群が週4回、B、C、D群が週3回であった。運動は50%VO_2max相当の強度による水中運動とし、トレーニング前後に最大酸素摂取量、同一最大下運動時の循環応答、血液性状、身体組成を測定した。 【結果及び考察】トレーニング後、最大酸素摂取量はどの群においても変化しなかった。最大下運動中の循環応答については、B、D群では変化が認められなかったが、A、C群では1回拍出量、心拍出量の増大、最低血圧、平均血圧の有意な低下が認められた。また、早朝空腹時の血糖値には変化は認められなかったが、糖負荷テスト後120分までのアンダーカーブ面積およびインシュリン濃度は、C群のみ有意な低下が認められた。一方、血中脂質に関しては、A、B群において総コレステロールの有意な低下が認められたが、C、D群では変化は認められなかった。皮脂厚はA、B、C群で有意に低下し、内臓脂肪厚はD群のみ低下した。以上の結果から、低圧環境下での水中運動は、血圧低下、一回拍出量、心拍出量増大といった心血管機能の変化、さらに糖代謝、脂質代謝の亢進を誘発し、生活習慣病の改善に対して有効であることが明らかとなった。しかしながら、それぞれの要因に対する効果の程度、速さは、低圧低酸素のレベル、運動頻度そして対象者の年齢層青年群によって異なることも示唆された。
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