1.目的:本研究は、中高年者を対象に、低圧低酸素環境下における安静時の末梢循環の動態(実験1)、さらに、低圧低酸素環境下における定期的な歩行運動が末梢循環の動態(実験2)にどのような影響を及ぼすか検討した。 2.方法:実験1は、中高年の男子16名(年齢61.7±4.3歳)を被験者とした。被験者は、常圧常酸素環境下(NE、気圧;760mmHg)と低圧低酸素環境下(HE、標高1500mに相当する気圧;634mmHg)に分け、それぞれに安静状態を保持させ、末梢循環の測定を行わせた。加速度脈波は、座位姿勢で測定部位の右手第2指の指尖部を心臓レベルに保持して測定を行った。加速度脈波は、波形の波をa〜eに分類し、基線から上の部分をプラス、下の部分をマイナスと定め、これよりb/a値、d/a値および総合的指標としてAPG Index=(-b+c+d)/a×100により求めた。実験2は、男子4名(年齢52.8±6.6歳)を被験者とし、持久的トレーニングは4週間、週2〜3回の頻度で、1日60分間の歩行運動とした。トレーニング後の加速度脈波の測定は、常圧常酸素環境下で実験1と同様な方法によって行った。 3.結果及び考察:1)実験1で安静時のd/a値は、HEがNEに比較して、有意な増加を示した(p<0.001)。APG Index値は、HEがNEに比して、有意な増加を示した(p<0.01)。2)実験2でトレーニング後のb/a値は、トレーニング前に比較して、有意な低下を示した(p<0.05)。トレーニング後のd/a値は、トレーニング前に比して、有意な増加を示した(p<0.05)。APG Index値は、トレーニング前に比して、有意な増加を示した(p<0.05)。本研究の成績から、中高年者に対する標高1500mに相当する低圧低酸素暴露が一時的に末梢循環を高い機能に維持できること、さらに、定期的な歩行運動は安静時の末梢循環を比較的早期に改善すること等が示唆された。
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