運動は身体機能、とくに心肺や筋肉の機能を賦活し、健康に対して大きな意義を有する。酸素は我々が生きていくために必須であるが、一方では、活性酸素による組織の損傷は、ガン、炎症、動脈硬化、老化などに関与している。本研究では、日常的に強度の高いトレーニングを行う高校水泳選手を対象に、運動負荷による酸化ストレスおよび抗酸化力の動向を検討した。 某高校水泳部員を対象とし、当日の朝食は献立を統一し、試験中の水分補給は市販スポーツ飲料500mlとした。運動負荷として日常的に行っている練習を行い、負荷時間は2時間とした。測定項目は抗酸化力(BAP)、酸化ストレス(d-ROMs)、乳酸とした。運動負荷前、負荷1時間、終了時(2時間)、終了30分後に手指先より採血した。 BAPは負荷開始後から経時的に上昇し、負荷終了時に最高値に達した。終了30分後には負荷前値に回復した。また、全経過を通して男女間で差は見られなかった。d-ROMsは負荷前に比べて負荷1時間後にはわずかに上昇し、負荷終了時には低下し、終了30分後には負荷前とほぼ同じ値を示したが、全経過を通して大きな変動は見られず、有意差はなかった。また、全経過を通して男女間に差は見られなかった。乳酸は負荷開始後大きく上昇し、負荷終了時に最高値に達し、終了30分後には前値に回復した。抗酸化力と乳酸値は有意な正相関を示した。 運動開始後、抗酸化力は上昇を始め、運動終了後には速やかに開始時の値に回復したことから、運動が抗酸化能を高めたことが示唆される。また、酸化ストレス値には変動が見られなかったため、普段から訓練を続けている運動選手では酸化ストレスへの抵抗性が高まっていると推測される。このことから、少なくとも日頃から鍛錬している運動選手では、運動によって抗酸化能が高まり、活性酸素の傷害が発生しにくくなることが考えられる。
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