昨年度までの全国調査の結果、男性の保健体育教諭は、39歳までは他教科の男性教諭と比較して、死亡率が低値であることが明らかとなった。しかし、その現象は40歳代で逆転し、保健体育教諭の死亡率が高値を示すようになる。55歳以降はさらに死亡率が上昇するという興味深い事実が明らかとなった。一方、女性教諭の場合には、今回調査対象とした過去3年間での死亡事例はわずか1件にとどまり、保健体育教諭と他教科教諭との比較はならなかった。すなわち、女性教諭の場合には、職業的運動習慣が死亡率に影響をおよぼす可能性について、明確することはできなかった。 我々は、得られた男性教諭の結果から、保健体育教諭は20歳代までは、体力の蓄積もあって、高い水準に維持され運動の機会も多いものの、それ以降になると、社会的要因などから運動量が急激に減少し、その一方で食餌量や嗜好品の制限が伴わないことによって死亡率の逆転が生じるのではないかと仮説した。 その後実際に我々が検討を試みた、保健体育教諭の学生時代と比較した体重増減と生活習慣の認識調査結果からは、学生時代と比較して5kg以上体重増加の見られた保健体育教諭では、「運動量の減少」にもかかわらず「食餌量の制限が伴っていない」と認識していることが明らかとなった。 そこで、保健体育教諭と他教科教諭との生活習慣がどのように異なるのかについて、実際に、高等学校保健体育教諭および他教科教諭を対象として、食生活習慣、日常活動量について比較検討を試みた。現在、まだデータを解析中であり、また十分な調査対象者数を確保できていないことなどから、十分な結論は得られていないものの、現在までに得られた知見からは、少なくとも保健体育教諭と他教科教諭との日常生活習慣に著しい差異は見出すことが出来きていない。このことから、やはり20歳代までの運動習慣とは著しく異なる(活動量の低下した)日常性生活が、保健体育教諭の健康状態に影響をおよぼしている可能性が示唆されている。さらなる解析を現在も進めている。
|