研究概要 |
1.咀嚼時の脳血流変化計測 咀嚼時の脳血流変化について、昨年度の側頭部中心の計測を発展させ、計測領域をより拡大して検討を進めた。健常者7名(19-20歳,全員女性)を対象に連続光型マルチチャンネルシステムを用いた近赤外光計測を実施。前頭部広領域(10-20 electrode systemのFp1-Fp2ラインからF3-F4ラインに挟まれた領域,14計測箇所)に入射-検出ファイバーを装着し(ファイバー間隔30mm)、左右片側ずつ咀嚼する場合についてヘモグロビン(Hb)濃度変化を評価した。全体として、前額部寄り(Fp1,Fp2近傍)で酸素化Hb(oxy-Hb)の増加が、頭頂寄り領域(F3,F4近傍)でoxy-Hb減少の傾向が認められた。一方、変化の側性については一定の傾向を見出すことはできなかった。 2.認知課題時の脳血流変化計測と咀嚼による影響 上記被験者に対し、同ファイバー配置条件で、語流暢課題(letter condition)遂行時のHb濃度変化を計測した。コントロール課題には単純発語(「あいうえお」の繰り返し)を用いた。語流暢課題により、7例中6例で左側を中心とした前頭部(Brodmann's area 10野(Fp1,Fp2位置)および左側46野近傍)におけるoxy-Hbの増加が認められ、咀嚼時のoxy-Hb増加の部位と一部重なることがわかった。さらに、語流暢課題の合間に咀嚼運動を介在させ、課題遂行時のHb濃度変化幅の増加(減少)の有無を調べた。繰り返しの課題付与による「慣れ」の結果(変化幅の減少)は特に認められなかった。また、咀嚼による血流変化幅の増加についても現計測範囲内では認められなかった。
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