介護保険のサービスが利用されるようになり、施設利用が増加すると伴に施設給付費の介護報酬に占める割合も増加している。制度が持続可能になるため、また、高齢者が住みなれた在宅で生活を継続できるためにも在宅生活を支援することは重要である。しかしながら、一度、施設へ入所すると在宅復帰をする者が少ない現状がある。そこで、本研究は、平成16年7月〜平成16年10月、平成17年4月〜平成17年6月に老人保健施設にて、入所者本人とその介護者から在宅復帰へ影響する要因を明らかにすることを目的に横断研究を実施した。さらに、縦断研究として、平成18年6月23日までに退所した者を調査し、在宅復帰した者とそうでない者を比較検討し、在宅復帰へ影響する要因を明らかにした。 調査期間中の対象者は101名で、期間中に死亡した4名を除外した97名(調査時の平均年齢±SD:83.6±8.4歳)を解析対象とした。在宅復帰できた者は10名(10.3%)、他の福祉施設へ入所20名(20.6%)、病院入院27名(27.8%)、現在もなお入所中40名(41.2%)であった。在宅復帰できた者以外をその他の群として、2群間で復帰へ影響する要因を検討した。在宅復帰できた群は、その他の群に比し、在所日数が有意に短く(585.2±338.3 vs. 972.8±519.7日)、入所時の介護度が1〜2の割合が有意に高く(80.0% vs 41.2%)、介護者が本人を評価した場合、在宅復帰できた者はその他の者に比し、排尿・排便・着衣・入浴が自立している者が有意に高い割合であった。また、入所理由として認知症の進行により在宅介護が困難になった者は少ない傾向を示していた。排尿に介助が必要となると在宅復帰ができるHRが0.34(95%CI:0.12-0.92)であり、排泄の自立が大きな影響要因であった。以上の結果より、要介護者の在宅復帰へ影響する要因は、入所時の介護度が軽いこと、ADLの自立、特に排泄・整容・入浴が自立していることであった。日常生活動作の維持・改善のためにも在宅復帰を見据えた計画的なリハビリを入所早期に実施し、介護者が在宅でも受け入れられるADLの改善を目指す体制をつくることが重要である。
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