本研究の目的は、ままごと遊び場面で子どもが表出するふり行為を手がかりに、子どもが自分の外に存在する生活文化に関する意味知識を自分の中に意味体系として構築する過程を明らかにすることである。 研究対象者は、公立保育園4園の2歳児クラスに在籍する幼児83名と未満児クラスに在籍する乳幼児30名とその担当保育者22名である。平成17年5月から平成18年3月まで、各園毎月1回、計44回、午前10時から11時までの約1時間に渡る自由遊び時間に保育室に観察用のままごと道具(2-4組)をセットし、そこで展開される遊びをビデオに録画する。ターゲット児の16名(各園4名)は、前年度からの継続観察対象児である。彼らと他児及び保育者のかかわりを録画対象とする。映像からトランスクリプトを作成し、ふり行為の表出について分析を行い、次の結果を得る。 1.個々のターゲット児におけるふり行為の表出には複数のスロット間に時系列的連鎖が顕著に認められることが明らかになる。 2.行為・感情・感覚・注意・言語による意味知識の共有が意味体系の構築の重要な要因となることが明らかになる。特に、言語は「供応する者」と「供応される者」というような単純な二者役割を短時間であるが2名の幼児間で安定して演じることを可能とした。このことから、言語は生活文化におけるスクリプトの獲得(意味体系の構築)だけでなく、役割に関する意味知識の共有と体系化においても大きな貢献をすることが明らかになる。 3.1歳児では意味体系の構築に保育者が大きな役割を果たしたが、2歳児では他児の役割が増大することが明らかになる。
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