年齢差別(エイジズム)とは、高齢者に対する「究極的な偏見、最後に残された差別、最も残酷な拒絶」である。 本研究では、現代社会に潜む年齢差別(エイジズム)構造を解明することを目的とした。具体的には、日常生活場面で、高齢者に対して意識的あるいは無意識的になされる、結果として虐待を引き起こす可能性のある「信頼関係のうえに築かれた予期しうる適切な行為を欠いている事態、単一あるいは繰り返して行なわれる行為」に着目をして、意識と実態双方から検証した。 本研究の意義は、まず、一般層を対象として、高齢者に対する差別意識や不適切な対応がどのくらい行なわれているのかを把握する大規模な調査であること、さらに年齢差別(エイジズム)の意識と実態を解明することが、延いては「虐待」の未然防止さらには予防にも寄与すると考えられる点にある。 調査は日本語版Fraboniエイジズム尺度(FSA)を用いるとともに、不適切な対応15項目を作成して、2006年1-3月に調査会社に委託して近畿の40歳以上の男女1840人を対象に、自計式調査票による郵送留置・回収により行なった。1104票回収(無効票6票を除く)、有効回収率は60.0%。 エイジズム意識においては、高齢であるほど、また病気がちであるほど、また、男性のほうが高齢者を差別する意識が強いことが明らかとなった。また、高齢者に対する不適切な対応という行動レベルにおいても、病気がちであり、男性のほうが、不適切な対応をしてしまっていることが明らかとなった。また、義母の介護経験が転化して、高齢者に対する不適切な対応に影響を及ぼしていた。 以上から、若者ではなく、むしろ高齢・病弱者が高齢者を排除するという自己排除の構造、さらには同質性のなかでの差異化という差別構造が明らかとなった。また男性による差別というジェンダー構造もみられた。
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