近年の国民の生活構造の変化とその特徴について解析するために、はじめに、総務庁統計局「家計調査」などの統計資料から、生活構造の実態を整理し、どのように生活構造分析に需要体系分析を適用するかを検討した。Almost Ideal Demand System(AIDS)のモデル設定、プログラムの開発、使用するデータの収集と整理を行い、消費生活構造の解析を行った。また、生活における貯蓄行動の意思決定過程についても解析した。その結果、以下の研究成果が得られた。 1.需要体系分析による消費生活構造分析 以下の2つの分析を行い、それぞれの消費構造の特徴を明らかにした。 (1)勤労者世帯を対象とした1990年以降の消費構造の分析 バブル崩壊を契機に、変化したと思われる消費構造の特徴を明らかにした。支出弾力性が高く、価格弾力的である選択的支出は、他の費目との間に高い代替、あるいは補完関係が認められた。しかし、教育費は上級財であるが、基礎的支出との間で代替関係を示した。 (2)食料消費構造全体と、食の安全性を脅かす問題が家計に及ぼした影響の分析 BSEと鳥インフルエンザが家計の生鮮肉と鮮魚に及ぼした影響を推計した結果、国内のBSE発生の影響が最も大きかった。 2・需要体系分析による単身世帯の消費構造分析 高齢化、晩婚化によって急増している単身世帯の消費生活構造の特徴を明らかにした。年齢と性別による消費構造の特徴が示された。 3.貯蓄意識の分析 意思決定法を用いて、若者(大学生)の貯蓄意識を明らかにした。貯蓄に対して、人生設計のためという意識ももっていることが明らかになった。
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