研究概要 |
1)各種吸着剤を用いた環境阻害物質の吸着処理 昨年度に引き続き、環境阻害物質としてフェノールおよびビスフェノールAの各種吸着剤への吸着実験を試み、その性能を比較検討した。7種の精錬度の異なる竹炭及び3種のポリシクロデキストリンビーズCDPB(α、β、γ-CDPB)による吸着実験から、ラングミュア型の吸着等温式で解析し、最大吸着量及び吸着平衡定数を算出した。その結果、竹炭によるフェノールとビスフェノールAの吸着では、生成温度が高く、精錬度が低い竹炭において、最大吸着量及び吸着平衡定数は増加する傾向を示した。ポリシクロデキストリンビーズ(CDPB)へのビスフェノールAの吸着では、最大吸着量はγ-CDPB、吸着平衡定数ではβ-CDPBで最も高い値を示した。また熱力学パラメーターの結果から、3種の吸着はすべて発熱反応であり、自由エネルギー値より、β-CDPBの吸着が最も強いことが示唆された。 2)シクロデキストリンとダイオキシン類の相互作用 2,3,7,8,-Tetrachlorodibendodioxin(PCDD)と、α,β、γの3種のシクロデキストリンホスト(CD)による相互作用について、分子力学(MM)及び分子動力学(MD)計算プログラムを用いて、その包接機能及び包接複合体の安定性を理論的に検討した。分子力場(MM)計算により、気相中及び水溶液モデルでのPCDDとCDの1:1及び2:1複合体の安定化エネルギーを算出したところ、すべてにおいて、ほぼCDの中心にPCDDが包接されていることがわかった。最安定化した各シクロデキストリンとPCDDの包接作用に伴うエネルギーは、すべてマイナスであり、各コンポーネント別のエネルギーでは、ファンテルワールス力の効果が大きく、両者間の疎水性相互作用の効果が高まり、包接複合体の安定性が増加することが示された。
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