研究概要 |
衣服のユニバーサルデザインを考えるためには,幅広い年齢層の衣服に対する意識を知ることは重要である.女子の衣服などファッションに関わる意識の年齢による変化をアンケート調査により検討した.高齢者の服装意識や消費行動に,加齢による身体機能の衰えの影響が見られ,流行などの情報を得る方法についても年齢層の差がみられた. また,衣生活における基本動作分析として,ボタンの形状とボタンかけ動作を取り上げ,着用実験を行った.特別な衣服ではなく,「ふつうの服」を着用したい身体障害者や高齢者はボタンかけのしやすい服を望んでいる.ボタンの形状とボタンかけのしやすさ,ボタンかけ動作について着用実験を行い検討した.その結果,高齢者はつかみやすい安定した形のボタンを好み,使い慣れた一般的な形のボタンの評価が高かった.さらに,衣服素材の特性を要因としたジャケットの着用実験を行い,高齢者と若者の動作および動作適応性評価の違いを官能評価,筋電図(三角筋),動作時間から検討した.伸縮性の大きい素材では動きやすさの評価が高く,伸縮性の小さい素材では高齢者の着脱時間が長かった.各動作における筋活動の積分値を着衣条件間で比較した結果,素材の差によるものと考えられる3パターンが認められた.また,高齢者と若者の官能評価の違いが筋電図にも現れており,高齢者では衣服の構造やゆとりだけでなく素材も動作を変化させている可能性が示唆された. ユニバーサルデザインの既製服としては,サイズ許容幅の広いデザインや着用者に合わせてサイズを変更できるようなデザインの衣服,または選んだデザインを個人のサイズ・体つきに合わせて作る個人対応の既製服が考えられる.インクジェットプリンターを利用して,身体状況に合わせてCADパターンを変化させることにより,健康な若者,車椅子使用者,妊娠中の者を想定し,同じデザインの衣服を着用させることを試みた.
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