研究課題/領域番号 |
16500487
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研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
増田 美子 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (90099234)
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研究分担者 |
鈴木 すゞ江 青山学院女子短期大学, 家政学科, 教授 (10235955)
河島 一恵 共立女子大学, 家政学部, 教授 (60086733)
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キーワード | 婚礼 / 葬礼 / ヴェール / 角隠し / 綿帽子 / 白布 / 髪 / 頭巾 |
研究概要 |
「なぜ女性は顔を隠すのか」を主たるテーマとし、日本・ヨーロッパ・中近東の三地域をそれぞれ分担して、研究補助者の協力のもとに研究を続けた。その成果は下記の通りである。 1.日本;儀礼における顔隠しの風習以前に、日常的に上流女性は男性の前で顔を隠すことが始まるが、その時期は平安前期頃と推測される。その要因の一つに、儒教の隆盛が挙げられる。以降、近世まで顔隠しの風習は継承されていくが、江戸中期以降は次第に顔を現す風俗へと展開する。しかし、婚礼や葬礼においては顔隠しが引き続き行われ、近代以降にも継承される。近代以降の儀礼は、商業主義と関わる為、その側面での考察も今後の課題となる。(増田美子・鈴木すゞ江・梅谷知世・諏訪原貴子) 2.ヨーロッパ;顔隠しの風習の始まりは、『新約聖書』パウロ書簡に由来していると考えられ、中世からルネッサンス期にかけてのキリスト教関係図像では、これに基づいて女性はヴェールをかぶった姿で画かれている。また、中世の教会法や教令集の中に、教会での女性のヴェール着用を義務づける記述や、教父の著作に『旧約聖書』の例を引用して新婦にヴェール着用を勧める記述が見られる。その後16〜18世紀になると、高貴な女性は黒ビロード製「仮面」をつけるようになるが、これは男性の視線を避ける意味もあり、中世のヴェールを継承したものと位置づけることができる。(河島一恵・内村理奈・黒川祐子) 3.中近東;髪や顔を隠す風習は、図像ではシュメールで既に見られる。文献ではアッシリアの法律に、既婚女性と未亡人は公道ではヴェールをかぶらなければならないとの記述が見え、更にコーランに、女性は人前に出る時は必ず長衣で頭から足まで身体を包むよう明記されている。(大枝近子)
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