研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、(1)2歳前後に始まるとされる反抗期における家族システムの変化を、多様な測定法によって重層的に記述すること、(2)反抗期をはさんだ歩行開始期の養育支援の具体的手立てを構築することであった。これらの目的を達成するために3つの課題を設定した。すなわち、(1)1歳児の親子を同一の変数を用いて2歳時点と3歳時点で測定し、各変数の変化の様相を明らかにすること、(2)反抗期の始まりから収束までの親子システムの変化を縦断的に測定し、システムの変化のプロセスを記述すること、(3)歩行開始期の子どもをもつ親や家族に対する養育支援を目的としたプログラムを開発することであった。研究成果を課題に即してまとめると次のようになる。(1)1歳、2歳、3歳の横断データ(全て第一子)を合計676名分収集した。このうち1歳の対象を3歳になるまで追跡した縦断データを約100名分収集した。このような体系的なデータはおそらく日本では初めてのものであろう。第一次分析の結果、3歳時点では対象者の約50%が反抗は強くなったと回答したのに対し、自己主張は約70%が強くなったと回答した。わが国の子どもの社会化の現場に、従来とは異なる変化が起きている可能性が示唆された。次に、親子システムを構成する変数を特定化できた。それらは、子どもの反抗の程度、子どもの言語発達、子どもの生活習慣の自立、親による子どもの言動の意味の読み取り、親による社会的資源の利用であった。これらの変数の効き方によって、親子システムの変化の様相には違いが生み出されるが、変化のパターンには共通性がみられた。今後、これらの変数を基軸にすえて約1年半の親子システムにおける時系列的変化を整理し、養育支援者のためのプログラムの作成に取り組む予定である。最後に養育支援を目的にしたリーフレット「いやいや期(反抗期)の子どもとつきあうには?」を作成した。この時期の親の多くが「いったいこのすさまじい反抗がいつまで続くのか?」と先行きの見えなさを訴えることから、子ども側の行動の変化と親側の受け止め方に焦点化して、おおよその方向性を示した。このリーフレットを、市区町村の乳幼児健診や子育て支援事業との連携によって配布し、その効果を確認することは今後の課題である。
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お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター紀要 第3号
ページ: 1-7
Bulletin of The Research Center for Child and Adolescent Development and Education, Ochanomizu University No.3
The Infant's Education, Tokyo : Froebel-kan co.,ltd. Vol.105
ページ: 8-15