研究概要 |
自立した高齢者の生活のサステナビリティのための課題を明らかにするため、福山市の都市構造の分析、福山市・島根県広瀬町(現安来市)・名古屋市の高齢者の生活実態調査を行い、次のような点を明らかにした。 1.高齢者の生活のサステナビリティを考える上で、生活の基盤を核家族の消費生活としてではなく、「生産と消費を包括」した生活の社会化の視点でとらえることが必要である。 2.自家用車による移動手段を前提とした住宅専有地の居住者は、住環境への満足度は高かったが、住み続け願望は低く、引きこもりがちであった。一方、伝統的なコミュニティに生活する農村・漁村の高齢者や公的交通機関を前提とした大都市の高齢者は、生産労働や地域コミュニティに積極的に関与しており、住み続け願望も強い。 3.住宅専有地の年齢構成は子ども世代と親世代の二極化しており、成立時期の早いところほど高齢化率が高くなっていた。生活実態調査からは人間関係が希薄なものが多くなる傾向が見られ、都市構造の分析からは歩いて利用できる商店や病院などライフラインを支えるものが少ない、高齢者の運転免許取得は男性の方が多い、など地域の問題点が見えてきた。約10年たつと親世代の多くが高齢期を迎えること、女性の方が長寿であることを考えると、その生活を支えるシステムづくりが課題となる。 4.我々の生活を、「健康」「労働」「コミュニケーション」を軸としてとらえ、元気な高齢者の生活のタイプ化を行った。見えてきた元気な高齢者像は,家事労働を含め,よく体を動かし,豊かな人間関係を持ちながら楽しく暮らしている姿であった。 そのためには,高齢者自身の生き方の姿勢の問題とともに,環境としてのコミュニティの条件整備や地縁・血縁によらない新しいコミュニティの確立が課題である。
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