研究課題
基盤研究(C)
本研究では保育園に通所する乳幼児(0〜2歳)の摂食行為の発達的変化を給食指導との関わりにおいて調査した。保育活動において、人の基本的な行為の一つである摂食行為を取り上げ、それを支える社会的資源=環境の分析を行うことが研究課題である。乳幼児期の子どもの摂食行為がどんな社会的資源に支えられ、どのような様式で、どのような経過を経て発達するものであるのか明らかにすることが本研究の第一の目的となる。また、本研究のフィールドは保育園である。保育園は家庭とは異なる。一人の保育士が同時に複数の子どもの摂食介助を行っている。このような状況は通常一人以上の大人が一人の子どもの摂食介助をする家庭での食事とは異なる環境を作り出す。保育施設が作り出す社会的資源に特徴的な摂食行為とその発達支援とはどのようなものであろうか。保育士による保育園における食事介助の特徴を明らかにすることが本研究の第二の目的である。以上の目的を達成するために、H16年度は保育園における乳幼児の食事調査とその分析を並行して行った。調査は2歳児に対して行われた。分析はこれまで調査データを蓄積してきているが、分析がまだなされていない0歳から1歳の乳児に対する保育者の介助行為と乳児自身の摂食行為が時系列的分析された。H17年度には主として、H16年度に収集した保育園2歳児グループの食事場面のデータ分析を行い、2歳児の摂食行為の特徴と保育士による2才児に対する保育介助の特徴を検討した。その際、介助場面の補足データの収集と保育者に対するインタビュー調査を行い、既に収集したビデオデータとフィールドノーツによる分析を補完した。また、既に分析をした0歳から1歳時期の子どもの摂食行為とそれに対する保育士の保育介助の特徴を整理し、0歳から2歳までの摂食行為の特徴とそれに対する保育介助の特徴を検討した。この研究からわかったことは、保育者は子どもが食べることを支援するのではなく、子どもが自ら食べようとする意図の育ちを支援するということである。このことは、保育者が直接子ども達に食べ物を食べさせようとするのではなく、その時の子どもの食べる力を考慮した上で、環境を組み替え、能動的に動くのを待つのである。保育活動の中で、保育者は子ども達の食べる力の育成に向けた足場掛けをすると同時に望ましい方向への暗黙の誘導を環境変形という手続きによって行っていることがわかった。
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北海道大学大学院教育学研究科紀要 96号
ページ: 69-91
Bulletin of graduate school of education, Hokkaido University 96
Kitaouji Shobo : Kyoto, Japan
ページ: 230