発酵性乳製品であるチーズおよびケフィアより分離した酵母がプロバイオティクスとしての機能を有するかどうかを観察するために、これらの乾燥粉末菌体を含む飼料をラットに経口投与し、消化管内および乳腺における免疫グロブリンA(IgA)の産生を指標に評価を行った。まず10週齢に達したWistar系メスラットを交配し、妊娠から離乳期までAIN-93を基礎飼料として飼育した。泌乳19日目にジエチルエーテルで麻酔後、屠殺し、小腸、大腸、乳腺を回収した。消化管の場合は腸管と内容物を個別に回収した。これらの検体にプロテアーゼ阻害剤を含む生理食塩水中を加え、ポリトロンホモジナイザーを用いながら粉砕し、上清を回収してそのIgA濃度を市販のELISAキットを用いて測定した。その結果、個体間での数値の変動が大きく有意差を得るには至らなかったが、酵母添加飼料を投与した場合、大腸内容物中のIgA濃度が高値となる傾向が認められた。この主な理由として以下の2つが考えられる。 1)消化管内で分泌されるIgAはIgA1とIgA2のサブクラスに分けられるが、後者の方がタンパク質分解酵素に対して耐性が高いといわれている。酵母を投与することによって、IgA2のバランスが高くなり、腸内細菌によって分解されづらいIgA2が多くなった。 2)腸管内でBリンパ球により産生された免疫グロブリンが管腔側に分泌されるためには腸管上皮細胞がその輸送に関与するpolymeric immunoglobulin receptor(pIgR)を産生する必要がある。酵母を投与することによって、大腸におけるpIgRの発現レベルが上昇し、IgAの分泌速度が上昇した。 また、酵母添加飼料を投与した母体および新生ラットは、体重の増加、開眼日、発毛日等の点において無添加飼料と差は認められず、食餌成分として否定的な兆候は認められなかった。
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