体内の抗酸化物質の代表であるビタミンCは比較的容易に食品から摂取することができる。この体内濃度を高めることは体内酸化が原因の一つとなるような疾患類の発症を抑制すると期待されるが、ビタミンCの体内動態に関する知見は少ない。本研究は特に体内が酸化を起こしやすい状態でのビタミンCの体内動態を明らかにすることを目的として行っている。 本年度ではまずストレプトゾトシン投与によりラットに糖尿病を発症させ、体内を酸化されやすい状態にし、ラット組織中のビタミンC濃度、その尿中排泄量を測定して、体内ビタミンCの状態を調べた。併せて、体内の酸化状態の指標となる血漿TBA値も測定して体内の酸化状態も調べた。結果、血漿TBA値は正常動物よりも糖尿病動物の方が高かった。一方、組織中のビタミンC濃度は両群の間に顕著な差は見られなかった。以上より糖尿病動物の体内酸化度は正常動物よりも高い傾向にあったことが認められた。 また、培養細胞にヒト肝臓ガン由来のHepG2を選び、この細胞のビタミンCの取り込みを調べた。生体異物として知られている物質は体内活性酸素の生成を促進し、体内を酸化状態にすることが知られている。そこで、培養細胞の培地に、代表的な生体異物であるメチルコラントレンを添加した場合と無添加の場合での細胞のビタミンCの取り込みを調べ、比較した。添加ビタミンC濃度が等しい場合は、メチルコラントレンを添加した方がビタミンCの細胞内濃度は高かった。細胞内が酸化状態にあるとビタミンCの取り込みが促進されるものと推測された。
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