本研究は、皮膚を通して紫外線を浴びたときの悪影響を日常的に摂取する食品によって防ぐことを目的とし、皮膚において紫外線により活性化されるメラニン生成を抑える食品成分のスクリーニングを行い、その防御メカニズムと、in vivoでの効果を検討することとした。 沖縄原産の数種の茶からB16メラノーマ細胞を用いてメラニン生成抑制作用のスクリーニングを行った。その中から月桃茶抽出物にメラニン生成抑制作用があることがわかった。月桃茶抽出物のメラニン生成抑制作用のメカニズムを検討したところ、月桃茶抽出物は、メラニン生成の律速酵素であるチロシナーゼ活性に、無細胞系では影響を与えなかったが、B16メラノーマ細胞に月桃茶抽出物を添加して培養したときには、添加濃度に依存して活性抑制効果が認められた。チロシナーゼ抗体を用いたWestern blotting法で月桃茶による影響を調べたところ、チロシナーゼ酵素の発現量が減少することがわかった。定量RT-PCR法により月桃茶のチロシナーゼmRNAレベルに対する影響を検討したところ、月桃茶によりチロシナーゼのmRNAが低下する傾向が見られた。またプロテオソーム阻害剤を添加しても、チロシナーゼ蛋白質レベルには影響が見られなかったことから、月桃茶はチロシナーゼの水酸化反応に直接関与するのではなく、チロシナーゼの転写レベルで作用し、チロシナーゼタンパク質を減少させることによって、メラニン合成を抑制する可能性が示唆された。 実際に月桃茶を食品として摂取したときの皮膚メラニン生成に及ぼす影響を調べるため、褐色モルモットを用いた投与実験を行った。褐色モルモットに月桃茶を飲料水として7週間投与し、毛をそったモルモット背部に紫外線を照射し、色素沈着部位を色差計で測定し紫外線非照射部と比較した。また投与7週後の皮膚OPA陽性メラノサイト数を測定し、血中の過酸化脂質マーカーとしてTBA値を測定したが、月桃茶摂取による顕著なメラニン生成抑制効果は認められなかった。
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