研究概要 |
卵アレルギー予防に寄与することを目的とし、熱に代わる食品加工法として注目をあびている「超高圧処理」と「酵素処理」を組み合わせて卵アレルゲンの低減化条件を検討した。□強いアレルゲン性を示すオボムコイド(OVMと略)に100〜600MPa(1,000-6,000気圧)の静水圧を加えた。アレルゲン性は好塩基球のモデル細胞として慢性骨髄性白血病患者の末梢血から樹立されたヒト好塩基球様細胞株KU812Fを用い、卵アレルギー患者血清IgE抗体を感作させたのち抗原OVM刺激によりヒスタミンとともに放出される酵素β-hexosaminidase(N-acetyl-β-D-glucosaminidase, E.C.3.2.1.52、NAGaseと略)活性を脱顆粒反応の指標とすることで評価した。NAGase放出率は圧力に依存して徐々に低下し300〜400MPa処理で20〜50%に低下した。その後圧力に依存して徐々に上昇したが未処理レベルまで戻らなかった。このことは超高圧処理によりOVMの高次構造が変化し、好塩基球の細胞表面にあるIgEレセプターに結合した2分子のIgEと架橋構造がとれにくくなったことを意味する。□OVMを100〜300MPa加圧下及び加圧後に消化し、トリシン-SDS-ポリアクリルアミド電気泳動法で消化性を、ELISA法で抗体との結合性を検討した。0.1MPa、37℃で30分間酵素処理すると、抗体結合性はペプシンで40%に、トリプシンで80%に、キモトリプシンで70%に減少した。これはそれぞれの酵素の加水分解性の結果と相関した。加圧処理によりペプシン消化は増加したが、抗体結合性に変化は見られなかった。TPCK-トリプシンはOVMを消化しにくいが、加圧することで抗体結合性を低下させることができた。TLCK-キモトリプシンはいずれの圧力下でもOVMの消化を促進し、抗体結合性を減少させた。 以上のことからOVMを超高圧処理することで、好塩基球およびマスト細胞惹起の即時型アレルギーを抑制する可能性が示唆された。また超高圧処理と酵素処理を組み合わせることでエピトープの切断を増加させ抗体結合性を低下させることができた。
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