過食や動物性脂肪の過剰摂取が糖尿病をはじめとする"生活習慣病"発症につながる分子基盤の解明を目的に、食と生体内糖・脂質代謝の接点である消化管に着目し、消化管ホルモンGIP(gastric inhibitory polypeptide)の生体の糖脂質代謝への影響について、GIP受容体欠損マウスをモデルに解析を進めた。 まず、野生型マウスとGIP受容体欠損マウスを通常食ならびに高脂肪食で飼育しエネルギー代謝を測定したところ、GIP受容体欠損マウスでは1-2週でほぼ摂取した脂肪をすべてエネルギーとして消費しているが、野生型マウスでは約6週必要であり、脂肪のβ酸化亢進がエネルギー消費の低下や体重増加に先立ち観察されることを明らかにした。すなわち、脂肪はGIPの存在下では脂肪細胞への蓄積に、非存在下で肝臓や筋肉におけるβ酸化の増加につながるが、さらに、この分子基盤を解明するために、高脂肪食負荷後早期のマウスから脂肪組織や肝臓・骨格筋を単離したので、平成17年度には遺伝子発現を網羅的に解析し各群における発現の違いを検討することによって、脂肪が蓄積されるか消費されるかを決定するスイッチ機構の解明が期待される。また、GIP受容体欠損マウスは全身のGIP受容体を欠いているが、脂肪細胞特異的にGIP受容体を発現させたトランスジェニックマウスを作製したので、脂肪-GIP-スイッチ機構のカスケードの解明を平成17年度には目指す。
|