研究概要 |
C型慢性肝炎のインターフェロン(INF)α-2bとリバビリン併用療法時にみられる溶血性貧血,血球減少や赤血球膜リン脂質中エイコサペンタエン酸(EPA)減少の改善に及ぼすEPA補給効果を検討した。INFα-2bとリバビリン併用療法を受けるC型慢性肝炎患者5例(男性4例,女性1例)に,EPA(1,800mg/日)を,ビタミンE(300mg/日)とC(600mg/日)とともに投与し(EPA群),EPA非投与の5症例(男性4例,女性1例:対照群)と比較した。治療開始前と開始後4,8,12,24週に採血し,赤血球膜及び血漿リン脂質脂肪酸組成,血漿α-トコフェロール,8-ハイドロキシ-デオキシグアノシン(8-OHdG)を分析し,臨床検査成績との関連を検討した。 赤血球膜リン脂質EPAは,EPA群では12週後には治療開始前値の3倍にまで増加したが,対照群では漸減した。赤血球数は両群ともに減少したが,白血球数は対照群で減少したのに対し,EPA群では開始前値を維持し,治療期間中対照群より高値であった。特に,リンパ球数は4週後にEPA群では120.8±25.4%と増加し,対照群は4週で69.8±13.6%,24週で55、6±15.5%と有意に減少した。治療開始前の赤血球膜及び血漿リン脂質のEPA比率は血清ALT値と有意の負の相関を示した(それぞれr=-0.859;p<0.01,r=-0.626;p<0.05)。治療開始24週後では,リンパ球数は血漿アラキドン酸/EPA比(r=-0.624,p<0.05)ならびに赤血球膜アラキドン酸比率(r=-0.648,p<0。05)と負の相関を示した。治療開始前の血清8-OHdG値は両群間で差がなかったが,24週後には対照群(0.36±0.07ng/mL)が,EPA群(0.19±0.08ng/mL)より有意の高値であった(p<0.05)。 IFN α-2bとリバビリン併用療法中のC型慢性肝炎患者へのEPA投与(ビタミンE、C同時投与)は,赤血球膜リン脂質のEPA比率を有意に上昇させ,リンパ球数の減少を抑制し,血清8-OHdGを減少させた。これらの観察はC型慢性肝炎治療におけるEPA補給の有用性を示唆するものである。
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