研究概要 |
C型慢性肝炎のインターフェロン(INF)α-2bとリバビリン併用療法時にみられる溶血性貧血,血球減少や赤血球膜リン脂質中エイコサペンタエン酸(EPA)減少の改善に及ぼすビタミンE、ビタミンCおよびEPA補給の効果を検討した。 INFα-2bとリバビリン併用療法を受けるC型慢性肝炎患者14例にビタミンE(500mg/日)とC(750mg/日)を8週間投与し、投与効果を非投与の16例と比較した。その結果、ビタミン非投与群では単核球リン脂質においてEPAの有意の減少を認めたが、ビタミン投与群では減少はみられなかった。 そこで、INFα-2bとリバビリン併用療法を受けるC型慢性肝炎患者5例に,EPA(1,800mg/日)を,ビタミンE(300mg/日)とC(600mg/日)とともに投与し(EPA群),EPA非投与の5症例(対照群)と比較した。治療開始前と開始後4,8,12,24週に採血し,赤血球膜及び血漿リン脂質脂肪酸組成,血漿α-トコフェロール,8-ハイドロキシ-デオキシグアノシン(8-OHdG)を分析し臨床検査成績との関連を検討した。 赤血球膜リン脂質EPAは,EPA群では12週後には治療開始前値の3倍にまで増加したが,対照群では漸減した。赤血球数は両群ともに減少したが,白血球数は対照群で減少したのに対し,EPA群では開始前値を維持し,治療期間中対照群より高値であった。特に,リンパ球数は4週後にEPA群では120.8±25.4%と増加し,対照群は4週で69.8±13.6%,24週で55.6±15.5%と有意に減少した。治療開始24週後では,リンパ球数は血漿アラキドン酸/EPA比(r=-0.624,p<0.05)ならびに赤血球膜アラキドン酸比率(r=-0.648,p<0.05)と負の相関を示した。 IFNα-2bとリバビリン併用療法中のC型慢性肝炎患者へのEPA投与(ビタミンE、C同時投与)は,赤血球膜リン脂質のEPA比率を有意に上昇させ,リンパ球数の減少を抑制し,血清8-OHdGを減少させ、EPA補給の有用性が示唆された。 これらの結果をさらに検証するために、PEG-IFNα-2bとリバビリン併用療法を受ける患者10例に同様にビタミンE、CとEPAの同時投与を行い、ビタミンのみ投与の10症例を対照として、リンパ球幼若化反応、リンパ球組成、赤血球脂肪酸組成等に及ぼす効果を48週にわたって観察中である。
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