研究概要 |
ストレスは様々な生活習慣病の発症に関わり、それらの憎悪因子であることが明らかとなっている。ストレスが免疫系に影響し、免疫機能に変化が生じる事が明らかになりつつあるが腸管免疫システムに対する影響は明らかとなっていない。ストレス負荷により腸管粘膜透過性が亢進する事が知られ、これに伴う管腔内抗原の体内侵入の増大に対応し、腸管免疫が変化する可能性が考えられるごとから、本研究ではストレスの腸管免疫に及ぼす影響を観察する事を目的とした。また、日常生活において経験するストレスには物理的要因、心理・情緒的要因がある点にも注目し、コミュニケーションボックスを用いた物理的ストレス及び心理的ストレス負荷による影響を検討した。SD系雄性ラットを研究に用いた。コミュニケーションボックス法を用い、物理及び心理的ストレスを負荷した。1日2時間のストレスを14日間継続して負荷し、腸間膜リンパ節(MLN)リンパ球、脾臓リンパ球及び小腸上皮細胞間リンパ球(IEL)を単離し、リンパ球サブセットの解析を行った。同時に、単離したリンパ球を培養し、ELISA法によりIgA, IgG産生能を測定した。またIFN-γの分泌能の測定も行った。リンパ球サブセットに大きな変動はなく、ストレスはリンパ球のポピュレーションには影響しないと示唆された。一方、物理的ストレスにより、MLNリンパ球及び脾臓リンパ球において、IgA産生能が亢進する事を明らかにした。MLNリンパ球のIFN-γ分泌はFS群で減少した。また、IELにおいては、物理的ストレス、心理的ストレスともに、抗体産生能を亢進させる事を明らかにした。これらの結果から、腸管免疫機能は、ストレス負荷に対し、適応的に亢進していると示唆された。
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