高脂肪食誘導性肥満マウスにおける腸管免疫機能の解析 【目的】食餌誘導性肥満マウスを用いて、肥満による経口免疫寛容誘導時の免疫機能への影響を検討した【方法】4週齢のC57BL/6Jマウスにラード添加の高脂肪食を5ヶ月間与え肥満を誘導した。肥満群及びコントロール群(正常体重群)の2群に分け、免疫寛容誘導群には1%-OVA(卵白アルブミン)溶液を3日間摂取させた。対照群には水を自由摂取させた。全てのマウスにOVAを2回腹腔内免疫した後に解剖し、血清抗体価、脾臓リンパ球のサイトカイン及びケモカイン産生能を解析した。また糞抽出液中の分泌型IgA抗体価を測定した。【結果及び考察】コントロール群では、OVAの経口摂取によって脾臓リンパ球のOVA特異的IL-2及びIL-10産生能が有意に低下し、経口免疫寛容の誘導が確認されたが、肥満群ではIL-10において抗原の経口摂取による影響が認められなかった。さらに血清中OVA特異的IgGlはコントロール群で抗原の経口摂取によって増加したが、肥満群ではむしろ低下した。血清中OVA特異的IgA、IgM抗体価については肥満群がコントロール群と比較して有意に低下していた。糞抽出液中の抗原(OVA)特異的分泌型IgAは、肥満群ではコントロール群よりも抗原の経口摂取による上昇が軽度であった。またコントロール群において、抗原の経口摂取によって脾臓リンパ球のMCP-1産生が増加する傾向が認められた。 以上の結果から、肥満により経口免疫寛容誘導時の抗原特異的免疫反応の動態が変化する司能性が示唆された。即ち、肥満により腸管免疫機能が変化し炎症やアレルギーの病態を修飾する可能性がある。
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