腸管上皮細胞は、タイトジャンクションによって互いに密着しており、生体機能の恒常性維持をはかっている。しかし、強い酸化ストレスによって腸管上皮細胞が著しいダメージを受ける可能性がある。そこで、本研究では、腸管上皮細胞の損傷レベル評価法として経上皮膜電気抵抗値(TER)測定によるタイトジャンクションの密着度を用いて、終濃度2.5mMH_20_2添加によって小腸上皮細胞モデルであるCaco-2細胞が受ける酸化ストレスを野菜が防御しうるかを検討した。 その結果、アスパラガス、赤シソ、カボチャ、トマトの水抽出液は、H_2O_2によるTERの低下をH_2O_2無添加のレベルまで抑制することができた。しかし、この効果は、野菜に人工消化処理すると、トマト以外の全ての野菜において消失し、野菜の酸化ストレス防御能は摂食後に低下すると考えられた。 また、野菜に加熱調理を加え人工消化処理液を調製し実験に供したところ、アスパラガス、紫アスパラガス、トマトにおいては、TER低下抑制効果が認められた。これは、アスパラガス、紫アスパラガスにおいて、加熱調理が野菜中の酵素を失活させ、消化中のTER低下抑制物質の消失を防いだと考えられる。また、このTER低下抑制物質の茄で加熱時における茄で水への流出はほとんどないことも示唆された。ゆえに、H_2O_2によるTER低下抑制効果を期待して摂食する場合には加熱調理が有効であると考えられる。 また、各試料液のTER低下抑制効果は、DPPHラジカル消去活性や各試料液中の粗ポリフェノール量と明確な相関が認められなかった。小腸上皮細胞における野菜の生体防御能は、調理過程、消化過程を加味した試料調製を行い、生体に近い実験系を用いて検討する必要がある。
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