POは、分化前PC12細胞に対しては70μM以上で、分化後PC12細胞に対しては50μM以上で生育阻害を及ぼすことが確認された。POの細胞形態に及ぼす影響を検討した結果、分化前細胞では70μM以上で凝集や死細胞が確認され、分化後細胞では伸展していた神経突起を50μM以上の濃度で崩壊させることが確認された。POのTb-微小管系への影響を検討したところ、分化後細胞では50μM以上で微小管の崩壊が認められた。この事実は分化前細胞でPO濃度依存的にGTPase活性が減少し、分化後細胞でもPO濃度依存的にGTPase活性が顕著に減少しており、微小管の形成量が減少していたことによるものと考えられた。いずれの場合も分化前細胞と比較して、分化後細胞がより強くPOの影響を受けていることが明らかになった。 次に、PO存在下で生育したPC12細胞の膜脂質を分析した結果、分化前細胞ではヒドロペルオキシド量が増加しており、分化後細胞においても同様にヒドロペルオキシド量が増加していた。また、分化前細胞ではPO濃度依存的に膜損傷率の増大が見られ、分化後細胞においてもPO濃度依存的に膜損傷率が大きくなっていた。更にPOは、分化前細胞で共存させたcis-パリナリン酸の蛍光強度を若干減少させ、分化後細胞では蛍光強度を更に大きく減少させた。この事実から生体膜中のヒドロペルオキシドを増加させていることが確認された。これらの結果より、POは細胞膜を損傷していることが明らかとなった。 更に、分化前細胞ではPOはSOD活性を減少させ、分化後細胞でもSOD活性を減少させた。このことより、POはSOD活性に影響して細胞の抗酸化系を低下させていると考えられた。
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