赤身魚および多獲性赤身魚の肉中にヒスチジンが多く含まれている。近年、その誘導体であるヒスタミンは脳視床下部で満腹中枢の一つであるヒスタミンニューロンを刺激して、満腹感を感じさせることと、脂肪分解を促進する抗肥満作用があることで注目されている。したがって、ヒスチジン含量の高い魚肉を摂取すると、脳内のヒスタミン量が増加し、ヒスタミンニューロンの活性化がおこる。その結果、摂食抑制がおこり肥満が抑えられると考えられる。本研究は、赤身魚および多獲性赤身魚の加工品や加工品エキスに注目し、それらのヒスチジン供給源としての有用性と、経口摂取による肥満防止効果を調べることを目的としている。 本年度は、水産練り製品の製造工程におけるヒスチジン量変化と、水産練り製品摂取量のヒスチジン摂取量への影響を調べることを目的としていたが、かつお節製造工程で得られるヒスチジン含量の高い呈味素材(タンパク質中ヒスチジン量が17%)が得られたので、まず、そのヒスチジン供給源としての有用性を検討した。ラットを用いた動物実験を行った結果、かつお節製造工程で得られるヒスチジン含量の高い呈味素材は、摂食抑制および脂肪分解促進作用を有する、有効なヒスチジン供給源であると判断された。この成果は学術雑誌「肥満研究」に報告した。また、ボランティアを用いた経口摂取試験(食事調査および身体状況調査)の結果、ヒトにおいても有効なヒスチジン供給源であると考えられた(未発表)。さらに、市販水産練り製品について、タンパク質中ヒスチジン量を調べた。多獲性赤身魚を原料とした製品にはヒスチジンが多く含まれていたが、多くの水産練り製品の原料として使用されている冷凍すり身を原料とした製品中のヒスチジン量は、多獲性赤身魚を原料とした製品のヒスチジン量より少なかった。
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