本研究は、赤身魚および多獲性赤身魚とその加工品および加工品エキスに注目し、それらのヒスチジン供給源としての有用性と、経口摂取による肥満防止効果を調べることを目的とした。 魚介類のヒスチジン含量は遊離ヒスチジン含量に依存しているので、魚介類の遊離ヒスチジン含量を測定した。その結果、遊離ヒスチジン含量はカツオ、キハダマグロ、ハマチ、サバで高く、トカゲエソ、マダイ、タチウオなどの白身魚とスルメイカを除く無脊椎動物肉では低かった。カタクチイワシの煮干は素干に比べて遊離ヒスチジンが少なかった。また、カツオ節めんつゆの抽出残渣は未利用資源であり、このタンパク質はヒスチジン含量が高いので、これを酵素分解すると、遊離ヒスチジン含量の高いエキスが得られた。これを煮干に添加して、抗肥満効果を期待してヒスチジンを強化した塩干品を製造することが出来た。 カツオ節製造工程で得られた熱水抽出物(BE)、鰹だし、カツオ節に着目し、そのヒスチジン供給源としての有用性と摂食抑制および脂肪分解促進作用を、ラットを用いた動物実験を行い調べた。タンパク質中ヒスチジン含量はBE、鰹だし、カツオ節の順に高く、いずれも有用なヒスチジン供給源であると判断された。また、Wistar系オスラットを用いてBE、鰹だし、カツオ節をタンパク質源として飼育すると、カゼイン(コントロール)をタンパク質源として飼育したラットと比べ、摂食量が少なかった。また飼育終了後、休脂肪量を測定した結果、BE、鰹だし、カツオ節食群ラットの体脂肪はコントロール食群ラットのそれよりも少なかった。したがって、BE、鰹だし、カツオ節は、摂食抑制および脂肪分解促進作用があり、肥満防止効果があると判断された。さらに、ヒトを対象としてBEの経口摂取試験を行った。その結果、BEの経口摂取により、エネルギー摂取量は減少し、BMIおよび体脂肪率も減少する傾向が観察された。
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