主要小麦タンパク質の1つであるグリアジンと乳ホエータンパク質のβ-ラクトグロブリンを用いた可食性フィルムの形成性、並びにその形成機構について調べた。これまでのゲル化に関する研究成果を活かし、脂肪酸塩混合によるコンポジットフィルムの調製を試みその特性を物理化学的およびタンパク質高次構造(二次構造)の観点から明らかにした。グリアジン・オレイン酸ナトリウム混合フィルム、β-ラクトグロブリン・カプリン酸ナトリウム混合フィルム共に、タンパク質単独フィルムに比べ硬く、グリアジン・オレイン酸ナトリウム混合系で脂肪酸塩添加フィルムは従来のグリセロール添加フィルムに比べ水蒸気バリヤー性に優れていること、また、β-ラクトグロブリン・カプリン酸ナトリウム混合系で、脂肪酸塩添加によりフィルムの微細構造(断面)の凹凸が減少しフラットな構造になることが判った。これらの系に更にグリセロールを共存させると、物理的強度の増加と伸展性の増加、並びによりフラットな構造の構築が観察された。これらのことから、脂肪酸塩の添加はフィルムにこれまでのグリセロールフィルムとは異なる性質を与え、更にはフィルム物性に対してグリセロールと相乗的効果をもたらすことが明らかになった。また、これらタンパク質二次構造レベルでのフィルム形成機構は、タンパク質の元来持っていた構造の特徴をそのまま反映している事が示唆された。以上の事から、これらの食品タンパク質・脂質混合システムはその可塑剤の選択・混合によりユニークで且つ合目的的なフィルムの調製の可能性を示唆した。
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