果汁飲料の食品加工時に産出される果実の搾汁粕は、未利用資源の食品加工副産物である。果汁飲料として活用が広いオレンジ、グレープフルーツ、レモンのカンキツ果実を取り上げ、これらの果汁加工時に産出する搾汁粕(主に果皮)を原料とした。そして、これらを麹菌(アスペルギルス属)で発酵することにより、高い抗酸化性を有する新機能性食素材の作出を検討した。抗酸化性を有する機能性食素材は、油脂の酸化防止などの抗酸化剤としての用途だけでなく、体内の過剰な活性酸素消去作用から生活習慣病予防の機能性素材として期待されている。そこで、搾汁粕を麹菌で発酵し、抗酸化活性を指標にして機能性の向上を検討した。さらに、同活性に関与する成分を調べた。 Aspergillus usamiiなど醸造に使用されている黒麹菌を、カンキツ搾汁粕に接種して25度で静置培養した。1週間の発酵処理により、搾汁粕の抽出液はDPPHラジカル捕捉測定法による抗酸化活性の向上が認められた。これらカンキツ果皮には、ヘスペリジンやナリンジンといったフラボノイド配糖体を含有しているが、発酵処理することによりアグリコンのヘスペレチン、ナリンジンが変換されていた。さらに、一部はフラボノイドA環が水酸化した8-ヒドロキシヘスペレチンや8-ヒドロキシナリンゲニンが生成していた。これら化合物は、麹菌発酵によって生成し、発酵搾汁粕の抗酸化性の向上に関与していることが示唆された。また、レモン、グレープフルーツ、オレンジともに発酵による抗酸化性の向上と、これらフラボノイドの生成が認められた。 Aspergillus saitoiによって調製したレモン果皮発酵物を急性運動負荷ラットに経口投与すると、肝臓の過酸化脂質量など減少といった酸化ストレス低減作用がみられている。レモン果皮発酵物に含まれるフラボノイドを分析したところ、発酵により高い抗酸化性を有するエリオディチオール、8-ヒドロキシヘスペレチンなどが生成していた。これらが酸化ストレス低減作用に関与していることが示唆された。
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