食品製造・加工時に産出される食品副産物は未利用食資源であり、これらを新たな機能性食素材に有効活用することを本研究の目的とした。カンキツ果実のレモンと新姫における果皮(カンキツ果汁搾汁粕)、米糠、ゴマ粕(ゴマ油抽出粕)といった食品加工副産物に着目した。 レモン果皮を水抽出し、逆相樹脂処理によりフラボノイドが豊富なレモン果皮抽出物を調製した。これを製パンに0.25%〜0.75%添加したところ、比容積の上昇が見られた。エクステンソグラフ測定により、同素材はパン生地の伸張度に影響を与え、これが製パンの比容積の増加に関与していることが推察された。また、レモン果汁残渣からフェニルプロパノイド配糖体、フラボン配糖体を単離し、これら成分の抗酸化活性と血管接着因子の発現抑制効果が認められた。そして、これら成分が動脈硬化予防に関わる食品機能性成分であることが示唆された。 新姫果皮に含まれるフラボノイド類の特徴を調べ、食品に活用される溶液である水、エタノールヘのフラボノイド類の溶出性を検討した。新姫果皮は他カンキツ果皮と比べると、高い抗酸化活性をもつエリオシトリンと、発ガン抑制効果が報告されているノビレチン、タンジェレチンが比較的高含有であった。これら成分は、果皮を熱水や加温25%エタノール水溶液に浸漬すると、短時間で溶出されることが分かった。 米糠、ゴマ粕を麹菌(Aspergillus属)で発酵処理することによる抗酸化活性の変動を検討した。米糠、ゴマ粕は、A.saitoiなどの黒麹菌を用いた発酵により活性の向上が見られ、発酵物から抗酸化成分を単離した。単離成分は、構造分析により、ピラノピロール類であり、米に含まれる抗酸化成分のフェルラ酸と同等の活性を有していた。同成分が、黒麹菌による米糠、ゴマ粕の発酵物に含まれ抗酸化活性の向上に関与していると推察された。
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