研究概要 |
メタボリックシンドロームが増加し、早期対策が求められている。我々は2000年から、学習と自己決定に基づく肥満改善プログラムを開発し、島根県在住の壮年(累計295名、BMI25.0±3.0、年齢56.2±8.4歳)を対象に、3カ月で3kgの体重減少および10%の代謝指標の改善を目標とした、食行動と身体活動への介入研究を行ってきた。 2004-2005年には、自己健康リスク認知と食行動および身体活動の変容を促進するリスクコミュニケーションを図るため、個別のリスクリストを作成し、身体状況と栄養・身体活動の評価および参加動機から、改善すべき習慣の行動目標をより明確にした。参加者の健康リスク認知は専門家の査定とほぼ一致したが、目標達成のための行動目標設定には、具体化、数量化の面で専門家の支援が必要であった。プログラム期間中の学習会では、個別の検査結果をもとに行動変容の促進因子と阻害因子について学び、参加者同士で話し合った。その結果、262kcal(13.1%)の摂取熱量減少および147kcal(7.7%)の消費熱量増加により、体重は1.5kg(2.2^〜-7.7kg)減少し、BMI(2.4%)、ウエスト囲(2.2%)、収縮期/拡張期血圧(2.3/3.8%)、総コレステロール(3,0%)、LDLコレステロール(4.0%)、HDLコレステロール(5.4%)、中性脂肪(13.3%)、血糖(1.4%)が有意に改善した。個別の健康リスク評価とリスクコミュニケーションがメタボリックシンドロームの早期予防・改善に有効であることを明らかにした。 体重変化量に影響を与えた要因は、ステップワイズ回帰分析により、摂取熱量差17%,消費熱量差9%,前BMI3%で計29%が説明できた。栄養素では炭水化物摂取減少の寄与率が18%で最も高く、運動では歩行による消費熱量増加の寄与率が8%で最も高かった。一方、体重変化量の代謝パラメータ改善への寄与率は、総コレステロール7.0%、中性脂肪5.4%、HDLコレステロール2.7%、血糖2.6%であり、10%未満であった。体重減少によってメタボリックシンドロームが改善しやすい集団を判別することが必要であり、代謝症候群を構成する肥満とその他の代謝異常との関係について、民族差や食行動の差異に着目した研究が課題である。
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