研究概要 |
研究課題「理科を専門としない教員のための水溶液に関する指導資料の開発」に関する本年度の研究実績は,下記の通りである. 第一に,溶液教材関係の情報を収集した.具体的には,インターネットの検索エンジン(Yahoo!やGoogleなど),Chemical Abstractsなどの抄録誌を用いて,国内外の化学および化学教育関係の雑誌を検索した,とりわけ,日本化学会の「化学と教育」や,米国化学会のJournal of Chemical Educationには,最新号から順次遡及調査し,本研究の基礎となる文献を入手した. 第二に,小学校の理科における水溶液の取り扱いに関する問題点について考察した市販の小学校教員向けの理科参考書にも,ミョウバンのような結晶水を含む化合物の水に対する最大溶解量の定量的な取り扱い方に関して重大な誤りがあることを指摘した.そして,理科を専門としない教員にも,最大溶解量が容易に取り扱える公式を提示した.得られた成果を,授業研究21,42巻9号に発表した. 第三に,K^+を含む種々の無機塩水溶液の冷却に伴う溶質析出量を推算し,小学校理科の教材としての妥当性について検証した.その結果,硝酸カリウム飽和水溶液が,今回対象とした水溶液の中では最も有効であった.得られた成果を,群馬大学教科教育学研究,4号に発表した. 第四に,小学校5年生理科で取り扱われる「物のとけかた」におけるマイクロスケール実験について考察した.わが国では,高等学校のマイクロスケール実験については比較的研究が行われている.しかし,小学校理科に関してはまだ十分には検討されていない.研究の結果,通常の生徒実験と比較して,試薬の量は1/5,実験時間は1/4に短縮できることを明らかにした.得られた成果を,Journal of Teaching Methodology, Gmma University, No.4に発表した. 第五に,小学校理科におけるマイクロスケール実験の基礎研究として,中学校理科や高等学校理科における「金属と酸・塩基との反応」に関するマイクロスケール実験についての研究も行い,試薬の量や実験時間の短縮が認められた,この内容を小学校理科向けに改良して,教材開発を進めた。
|