量子論を高校化学でわかりやすく導入することを目的として、教科書等の国際比較、海外の教育機関の訪問調査を行い、さらに、高校での使用を目的とした量子論テキスト案を作成し、大学の教養課程での実践を試みた。 まず、アメリカの中学・高校およびその他の教育機関を訪問し、実態調査、意見交換を行った。量子論は程度の差はあれ高校化学に取り入れられており、教員もその必要性を認識している。そこで使われていた教科書の情報やカリキュラム、授業資料等を入手し、それらをはじめ、他の教科書や指導書を参考に、わが国の高校での使用を前提とした量子論テキスト案を作成した。 高校での実践に先立って、大学教養課程での実践を行った。岩手大学教育学部武井隆明助教授を研究協力者として迎え、2大学での実践を依頼した。1回めは化学を専門としない理系大学生向け、2回めは文系の大学生向けの実践を行った。理系大学生向けでは、概ね良好な結果が得られたが、文系の大学生向けでは、量子論以前の問題も見えてきた。 また、量子論を反映した化学授業を行っている日本の高校を訪問・調査した。量子論を取り込むことにより、多くの高校生にとって、化学が納得がいくものとなっている実態が判明した。 今後、わかりやすくする工夫を重ねることにより、高校での量子論も可能となると考えられる。 なお、正当な量子論より逆に後退した「ルイス構造式」を多用している高校や大学初年級向けの教科書が、アメリカや台湾等に見られる。その得失等についても現在検討を行っている。
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