研究概要 |
本研究は,理科教材として最もポプュラーに使われている「花こう岩」について,その生成過程から導かれる岩石の特徴(組成・組織・産状)を解説し,それらに基づいて,花こう岩が我々の生活に深く結びついた岩石であることを,資源・災害・環境の側面から理解させる教材を開発することにある.とりわけ,地学分野に携わってこなかった教師にとっては,生活に直結したこれらの課題を自分自身が正確に理解することすら危ぶまれる状況にある.こうした状況をかなり意識的に捉え,視覚を通じて平易に解説されていくプロセスを基本に据えて,今年度は以下のような点について開発を進めた. 1.花こう岩の特徴を理解するために,野外レベル,標本レベル,薄片レベルでの観察事項を整理し,順序だてた理解をすすめるシナリオの作成と静止画像の撮影・収集をおこなった. 2.資源の側面から花こう岩を理解するために,「石材」・「粘土」・「ウラン燃料」を取り上げ,その生成過程についてのシナリオ原案を作成し,それにかかわる静止画像の撮影・収集を行った. 3.災害の側面から花こう岩を理解するために,風化・マサ化を岩石組織の側面から解説し,その結果として引き起こされる「土砂災害」を取り上げ,それにかかわる静止画像の撮影・収集を行った. 4.環境の側面から花こう岩を理解するために,山地部に花こう岩が分布する地域を流下する河川とその下流部の平野における堆積物の関係から,生活空間(平野の地形)に多大の影響を及ぼす材料となることを理解させるためのシナリオを作成した.
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