(1)アリストテレスの知識論にもとついた論述教育の整理と教材作成 理論は、つぎのように整理した。人が作り出した物事は、アリストテレスの4原因説に従い、各原因を分析し再結合すれば、論理的に把握することができる。目的因と形相因(テロス、アイデア)を述べるのは定義的な論述である。物事の構成要素(質料因)を、始まりから一連化(始原因)としてとらえるのは、システム的(体系的)叙述である。物事を定義しそのシステムをいえることは、論文の基本形を身につけることである。 定義法は発明品などについて樹形図を作り、樹形の分岐点に目的とアイデアを書き込ませることで教える。システム叙述は、構成要素を縦軸、横軸にプロセスをとった表をつくって両者の交点にあるプロセスのある部分の働きを記入させることで教える。 定義法と質手無叙述を核として、その前に主観的な叙述と客観的な叙述の違い、情報の分類と順番の必要性などの予備的な学習をおくことで、60時間分の学習テキストをつくった。 (2)今日の欧米文章教育におけるアリストテレス知識論の位置づけの調査 2週間をかけてアメリカの調査をおこなった。調査対象は、州の国語教育行政担当者、大学での国語教育研究者へのインタビュー、レトリックおよびライティング教育の研究文献収集がその内容である。大学教員によるレトリック史の研究の流れと、現実社会の要請に応えて国語教育を改革しようとする実践的な流れが複層的に進んでいることがわかった。 (3)4原因説について アメリカの国語教育権威だったE.Corbettは、主著において4原因説がレトリック理論の発祥の地であることを指摘している。しかし、この分野の研究はアメリカでも少ない。 (4)」アリストテレス理論の今日的意味 NAEPやPISAの読解力定義は伝統的レトリック理論を基礎におくことで、アリストテレスと深いつながりを持っている。
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