[1]はじめに 本研究の目的は、高専1年生を対象に、個々の学生の能力や関心の向け方により様々な解答の仕方があり、その解答を考えるにはある程度の試行錯誤が必要であるような数学教材を収集・開発し、そのような課題に対して提出されたレポートの評価方法を確立することにある。そのため、長期休業等を利用して試行錯誤を伴う課題を提示した。たとえば、三平方の定理を成立させるような自然数に関する考察や、関数のグラフで囲まれた図形の面積の求め方に関する考察などを行わせた。 [2]学生の感想・課題の評価 このような課題に対して、成績下位の者でも70%は「面白かった」「楽しかった」「勉強になった」との感想を述べている。その感想は、成績の上下や数学の好き嫌いにはよらない。成績下位者でも、半数弱が「数学的なことで新しい発見があった」としている。個々の学生のレポート内容を、指摘事項の数、数学としての到達度等の幾つかの項目ごとに評価して相互の関連性を探ると、記述の一般性と思考の流れの発展性を組み合わせると新規事項の発見に対する認識の有無との間で強い関連性がみられた。 [3]まとめ 数学の1つの問題を長時間考え抜く体験をさせることにより、数学的な事柄に関して何かに気づく発見の喜びを多くの学生に感じさせることができた。それは、成績の上下や数学の好き嫌いにはよらない。成績が下位の学生でも何かに気づくことができたのは、テクノロジー利用の効果が大きいと思われる。課題の考察は長期休業等を利用しているので、通常の授業体系を変更する必要はない。多様な内容で提出される課題の評価の仕方は残念ながら確立できなかったが、その評価にあたっての一つの視点を得ることができた。今後は、その方向での評価の具体的な方法を引き続き検討していきたい。
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