研究概要 |
1 地すべり地の自然環境に関する基礎調査 房総半島南部では、鴨川〜保田にかけて多数の地すべり地形が分布する。これらの地域は、河川が東西方向の流路を持つほか、東西性のリニアメント、三角末端面など、構造的な運動に由来する地形も多数見られる。地すべり地形が特に密に分布するのは、嶺岡山地の南北両斜面、愛宕山北部、平群里中、富山の北部から伊予ヶ岳にかけての丘陵斜面などである。地質的には、山頂付近に蛇紋岩が露出する泥岩・砂岩の分布地域(剪断された保田層群:高橋,1996)に最も頻繁に認められる。このことから、蛇紋岩が貫入する際に形成された断層破砕帯の存在が、地すべり発生の素因となっていると考えられる(Furuya,1985)。 地すべり地形が密集する嶺岡山地は、周辺の丘陵に比べ、谷が浅く、山頂付近まで10〜15°の緩斜面が連続する。また山腹に平坦面や急崖、凹地、亀裂などの微地形が分布し、複雑な斜面地形となっている。このような微地形に対応して、表層の地質、植生、水などの土地条件も異なっていることが予想される。さらにその結果として、地すべり地の土地利用形態にも特徴があり、例えば地すべり地では古くから棚田耕作が展開され、その土地保全機能や景観的価値が見直されつつある。このように嶺岡山地は、適度な広がりの中で、さまざまなスケールの地形と、地質、水、植生、人間活動などが密接に関連して成り立っている地域であると考える。 2 地形・地図を利用した講座・観察会の企画立案・教材の開発 地すべり地の自然環境に関する基礎調査を踏まえ、平成17年10月に、地学講座及び観察会「房総の地形を訪ねる-保田から嶺岡横断-」を実施する。今年度はその具体的内容について検討し、下見を行った。また講座の教材として、保田〜嶺岡の地形模型(水平縮尺1:20000)、及び航空斜め写真を利用した冊子「鳥の眼から見た房総半島-房総南部地形集-」の作成を行った。
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