研究概要 |
本年度は,前年度に構築した演奏初心者の親が初学者の子どもと容易にピアノ連弾できるようにするシステム"Family Ensemble"のさらなる改良を行うとともに,その他の演奏学習促進手法に関する検討を行った.Family Ensembleの改良については,演奏練習過程においてシステムからどのようなタイミングでどんな情報を提示すればよいかについてまず検討した.従来から光るキーボードなどが存在し,次に弾くべき音を常時提示する支援が行われている.しかしこのような支援手法では,楽譜を読む力が育成されず,またフレーズ単位での音楽的なまとまりを意識しにくくなるという弊害がある.そこでまず被験者実験を実施し,ある楽曲の演奏練習を行っている際,学習者がどのような行動をとるかについての分析を行った.その結果,学習者は練習過程でしばしば演奏を停止するが,その際停止箇所以前に誤りがあった場合だけではなく,停止箇所の数音先に困難を感じて停止している場合も多いという事実を見いだした.そこで,Family Ensembleで考案した演奏位置追跡アルゴリズムを応用・改造し,演奏停止時に,停止箇所を楽譜上で見いだすと共に,その停止箇所以前に誤りがあったか無かったかを判定できるようにした.そのうえで,誤りがあった場合は停止箇所までのフレーズの模範演奏映像を提示し,誤りが無かった場合は停止箇所以降のフレーズの模範演奏映像を提示するシステムを考案・実装した.またこのシステムでは,誤りの有無にかかわらず,学習者が演奏を継続している間は模範映像を提示しないことにより,読譜学習を妨げないよう配慮した.現在このシステムを用いた評価実験を実施し,その有効性を確認しつつある.このほか,ブロックを並べることにより作曲を行う音楽学習支援システムや,「離鍵」動作に注目した音楽表現の構築プロセスの分析研究等を実施した.
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